第12話 キルタンは神のために!!
2020年も残すところわずかとなりました。
それにしても今年は激動の年でしたね。
コロナウィルスが世界中で流行し、多くの方が亡くなりました。
暮らしも大きく変わりました。
私にとっても今年は大変な年になりました。
1月に母(84歳)、8月に父 (86歳)が亡くなりました。
そしてコロナウィルスの影響で音楽の仕事がほぼキャンセルとなりました。
思いも寄らない事態でした。
仲間と楽しんでいたキルタン会は軒並み中止になり、音楽を教える仕事も、コンサートで演奏する仕事も全て出来なくなり、音楽が遠くへ行ってしまったような感覚を覚えました。
私の周りに当たり前のように日常的にあった音楽が急に消えたような感じでした。
もちろん家で1人で歌や楽器を練習したり、好きな音楽を聴いたりすれば良いのですが、気の合う仲間やいつもコンサートに来て下さる皆さんと素敵な音楽を共有できないことが大きなストレスでした。
人とふれあう大切さを痛感しました。
リモートでキルタンなどもしましたが、微妙に音がずれて変な感じであまり好きではありません。
今まで普通にできたことが突然できなくなるのは辛いですね。
しかし、コロナ渦の中で学んだことも多くありました。
緊急事態宣言が発令され、外出を自粛する中、家の中の不用品をかなりの量処分し、不要な物が大切な物を見えなくしていることに気づきました。
そして、運動不足解消のため、家の近くの山などに散歩に行き、近くにこんなに素晴らしい自然環境があったんだと初めて気づきました。
忙しい日常の中で全く見えていなかった物が次々と見えてきました。
これは大きな収穫でした。
これからどのように残りの人生を生きて行くかも少し見えた気がします。
時間があるので本も読みました。
田森雅一著『インド音楽との対話』という本の「はじめに」という部分に心に留まるお話がありました。
ムガール帝国の宮廷にインド音楽史上最高の音楽家と言われるミャーン・タンセンが仕えていました。音楽好きの大帝は彼を大切にしていましたが、ある日、タンセンが自分よりすぐれた音楽家がいると言うので、ぜひその音楽家に会いたい、とヴリンダーバンの森に会いに行きました。
その音楽家はタンセンの師匠で、瞑想を終え歌を歌っていましたが、その声は森を震わせ大帝を感動させました。
大帝は「なぜお前はあのように歌えないのか?」とタンセンに聞きました。
「私はあなたのためにだけ歌っています。けれども彼は神様のためだけに歌っているのです。」
このお話を読んで、なるほど!!と思いました。
キルタンとは神を賛美するためにあるのです。
それこそが本当のキルタンなのです。
来年はまた多くの仲間と集まって、神に捧げるキルタンが出来ばと思います。
皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。